第七回

on 2016年9月6日 Column

目には見えないもの

残暑。

ライブとレコーディング、ワンマンへ向けての準備。

新しい楽曲制作、アレンジ。

と山積みになった、課題を一つずつ、少しずつ、かつ急ぎつつ、
丁寧にやっていると。

あっという間に8月も終わり。

基本同じサイクルの毎日を生きているけれど。

8月中旬以降、スケジュールの合間をぬって何度か外出をした。

昨年3月ぶりの帰省。と一泊。

久しぶりにした両親と祖母との会話。

近況を報告、シュウゴの話、
これからの展望の話をしたり。

就職して実家を出た弟の話やこれからの家族の話もたくさん聞いた。

ご飯を食べて、酒を飲んで。

喜ぶ祖母の顔、

親父の笑い声、

酔って泣き上戸になった母親の涙。

「ああ、自分はここで育ったんだな」って、目の前の家族を見ながら、

目には見えない大切な思いを感じた。

もっと頻繁に帰らなきゃと自分を少しだけ責めた。

目には見えない大切な思いっていうのは

目に見えるものに触れなくちゃ、会いに行かなきゃ感じられない。

YKJがパーソナリティを務める音楽番組「VOICE」の収録ではあったけれど。

母校、蕨高校へ足を運ぶ機会もあった。

卒業して10年以上たつ母校。シュウゴと出逢った場所。

「記憶障害?」と言われる程、昔の事を覚えていない僕だけれど、

母校を訪れると、あの時の、あの頃の思い出や記憶がみるみる蘇った。

頭の中に蘇る景色は

当時の友達や、先生、大好きだったあの子の顔、みんなの笑い声。

とても不思議な感覚。

そしてとても懐かしく、愛しい景色。

それと同時に少しだけ怖い気持ち。自分の姿だけが見えない。

あの時のみんなの笑顔や笑い声は聞こえるし見えるのに、あの頃の自分が見えない。

何故見えなかったのかついて未だに考える。

その答えが分かる様な曲を作って、

あの日あの時、僕を支えてくれた仲間達に恩返したい。

自分がこうやっていられるのもみんなのおかげだ。

足を運ばなきゃ、会いに行かなきゃダメだ。

目には見えない大切な思いは

目に見える場所に行かなきゃ感じられない。

大好きで、大尊敬し、大ファンである先輩の
ライブへ足を運んだ。

いつもイヤホンで聴いている沢山のナンバーを
ライブで沢山聞いた。

一人で行ったのに周りを気にせずボロボロ泣いた。

メッセージが、歌声が、表情が、演奏が

僕と「その先輩」が出逢ったときの事を思い出させてくれた。

初めて歌を聴いたときの感動を

「変わらなくちゃ自分」と思ったあの衝撃を、もう一度思い出させてくれた。

目には見えない大切な思いは

目に見える場所に聴きに行かなくちゃ感じられない。

小さな四角い端末から、簡単に膨大な量の情報を見る事ができる現代

自分は一体何を見ているのか

この中からどれだけの事を感じているのか

目には見えないものが「なくなってしまう前に」触れよう。

目には見えないものを「失ってしまう前に」会いに行こう。